【移住のきっかけは?】
私は城陽市の出身で、伏見に来たのは2015年です。
実家の両親が「終の住処」として伏見に引っ越すことになった際、私も子ども二人と一緒に移住しました。上の子が年長、下の子が年小になったくらいのタイミングでした。
それまで、伏見に対しては「ちょっと都会かな」くらいのイメージしか無かったのですが、移り住んだら住みやすさを実感しました。交通の便がよく、商店街も活気がありましたし、子ども二人を連れてうろうろするには丁度良い環境でした。今も商店街の近くに住んでいるのですが、大手筋商店街や納屋町商店街など休日も含めてよく訪れています。
【元々お店を開きたかったのですか?】
以前、祖母が純喫茶を経営していて、2、3年その手伝いをしていました。
その記憶からか、自分も将来お店をやってみたいという思いがずっと心の中にありましたが、やはり現実的じゃないなと…。まずは子どもを育てるため、がむしゃらに働いていました。
でも、子どもが成長して手がかからなくなってきた頃から、だんだんと自分の人生を考えるようになったんです。人生の後半を考えたら、このまま年を取っていくのは嫌だなと思い、この場所で偶然良い物件に出会えたので、イチかバチか借りてお店をやってみようと決心しました。
この建物は、現在は喫茶店として使用していますが、借りた当初は古民家でした。最初は「ここをお店にするにはどうしたらいいのだろう」と、手探り状態で作業が始まりました。調理スペースも何もないところから自力でDIYです。営業許可をとらないとお店はできませんから大変でした。でも、周りに協力してくださる方がたくさんいてとても助かりました。
実は、ここで使っている椅子やテーブルは、祖母のお店で使われていたものなんですよ。ちょうど保管していた倉庫を解約して中に置いてある物を処分しようとしている時でしたので、使えそうなものをそのまま持ち出してきたんです。昔のものはやはり落ち着きますよね。
当時は会社勤めで決まったお給料をいただく生活でしたが、自分のお店を持つにあたって何か大きな覚悟をしたわけではないです。辞めても生命まで取られるわけではないし、やりたいことをやってみようと。そこからは川の流れに乗るように進んでいきました。
【オープンするまでの苦労は?】
やはり、元のお家が古いので、どうやってお金をかけずにお店を作ったらよいか苦労しました。
電気の配線等は素人では無理ということで、そこだけプロの人に任せましたが、他の内装は材料を近くのホームセンターで調達して、見よう見まねで作業しました。素人のDIYなのでプロの人が見たらびっくりするかもしれませんが…(苦笑)
壁一面に漆喰を塗って達成感を得たのもつかの間、少ししたら塗ったはずのものが浮いてきて、全部はがれてしまった、という失敗もありました。何も専門的な知識を持たないままのスタートだったので、その日1日の作業が無駄になることもあり、落ち込んだこともありましたが、根がポジティブですし手を動かすことが好きなので、コツコツ取り組みました。
2022年のクリスマス頃から、毎日壁を塗ったり床材を貼ったり作業を続け、2023年4月にオープンしました。この春で丸2年が経ちます。
【オープンしてみてどうでしたか?】
思った以上に大変でしたね。会社勤めをしていた頃の、決まった勤務時間で基本のお給料をもらう生活が全く無くなったので…。
「これでよかったのかな」と、ついネガティブなことを考えてしまうのでそれとの戦いでしたが、小さくても成功体験を積み重ねることで乗り越えてきました。
お店を開いて良かったことは、人付き合いが楽しくなったこと。これまでは、会社に属する歯車としての私であって、「個人」としての感覚が薄かったのですが、地域の方が足を運んでくださることが増え、良い意味で人間くさく付き合うようになりました。おじいちゃんおばあちゃんの常連さんも多く、若いお客さんもデートで来店してくださいます。
【お店のおすすめはありますか?】
注文で多いのは、コーヒーや「ちょっと呑みセット」。たまごサンドなんかも結構人気ですよ。
あとは、いい意味でこだわりがないことを心がけています。例えばコーヒー豆。高級な豆を取り扱うよりも、お客様にリーズナブルな値段で美味しくコーヒーを飲んでいただけるよう丁寧に淹れます。のんびりお酒を飲みながらぼーっと過ごしたり、ウィスキーを飲みながら読書したり、寛いでもらえたらいいと思っています。あまり気取らず、好きなようにこの空間を楽しんでもらいたいですね。たまにはお昼からお酒を飲んだっていいじゃない、と。また、ここ中書島で皆さんの拠り所になるような場所を作りたいと思っているので、こんなお店があるということを広めていきたいです。
【今後こうしていきたいというのはありますか?】
もっと自然な、地域の皆さんのライフスタイルに溶け込んでいくようなお店作りをしたいと考えています。
コーヒーとお酒と古いもの…元々古いものに惹かれ、骨董屋さん巡りも大好き。最近は好きが高じて古物商許可証を取りました。今後は普段使いできるレトロな昭和のガラス食器等もお店で販売していきたいです。
また、自分が長くお店を続けられるような形を模索しています。好きなことを極めながら、大事にして続けていきたいですね。地味で目立つことはなくても、灯火のように長く続けてこの場所に溶け込んでいけたらいいなと思っています。
【お店をしたい方に向けて、一言メッセージをお願いします】
自分の健康さえあれば、なんとでもなりますし、やりたいことはやってみたら良いと思います。
人生には、いつか終わりが来るので、後悔しないようにやってみてほしいです。完璧を求めず、続けているうちに更新していくのが良いのではないでしょうか。このお店も最初始めた時はもっと殺風景でしたが、少しずつ手を加えて、まだまだ今も進化しています!