伏見区の向島にある「ヤマダファーム」。200種類以上の野菜を無農薬で育てています。つながりのある飲食店や料亭だけでなく、販売は、調理する方の直接の反応を知ることができ、とても刺激的だと言います。最近では、インスタグラムでつながった料理人から直接オファーが来ることも。安心・安全は当然のことと語り、美味しさを追求した野菜やお米をつくるヤマダファーム7代目山田耕一さんにお話を伺いました。

歴史や想いの重さを感じ、種を引き継ぐ

全国の農家さんから後継ぎがいなくなったり、地域でその品種を作る人がいなくなったため種を譲り受け、品種を保存することに注力しています。そのため、全国でもヤマダファームでしか作っていない野菜がいくつもあります。昔ながらの在来種の野菜を育てていた方にどのような思いで今まで野菜を作ってきたかを聞く機会も多く、とても身が引き締まるという山田さん。

「ヤマダファームでは種取りをしているため、野菜を花が咲くまで畑に置いています。一般的には、花が咲く前に次の農作物を植える準備をするためにすきこんで土に還すことが多いです。ただ、うちは畑の枚数が多い関係もあり、花が咲き、種ができるまで畑に植えたままにできます。こうした植物のライフサイクルを見届けられることも特徴の1つだと思います。」

無農薬で育てているため、手で草取りをします。ネギに含まれる香り成分が害虫を寄せ付けにくいことに注目し、九条ネギの畝をうまく配置するなど工夫を凝らしています。また、肥料は自然由来のものしか使用してしません。

「例えば、ニワトリのフン、サンマやサバの内臓をペレットにしたもの、酒粕、糠、飲食店さんからいただいた野菜の切れ端や皮などから堆肥をつくっています。酒粕や糠、もみ殻に混ぜ込み堆肥をつくり、畑に撒いて野菜を育てています。京野菜は、元々京都人の塵芥(ちりあくた)を使って作られていたと言われており、昔と同じように特別なことをしているわけではありません。今はいい肥料があり、堆肥から作る農家は減っていますが、未だに昔ながらの作り方をしている農家も数軒ですがおられます。」

伏見区内では、清和荘さん、松廣さん、魚三楼さんでヤマダファームの野菜やお米を食べることができます。京都市内では、他にも多くの飲食店で食べることができます。

畑一面の菜の花。意外にも花粉症で悩む山田さんには過酷な職場だ

芽キャベツはこのまま配送し、収穫をプチ体験してもらうことも

オーダーメイドで野菜を育てる

 耕一さんで7代目となる、ヤマダファーム。学生時代は、農家を継ぐか迷っていました。ただ、代々受け継いでいるものの大きさ、大切さを感じ、耕一さんは農家を継ぐことを決意。まずはインプットのため、大学3回生の頃に世界や日本のさまざまな農家を見て回りました。

「アメリカカリフォルニア州にあるオーガニックの農場で研修していた時期があります。その農場は、シリコンバレーにある会社の社食に野菜を卸しているところでした。かごに野菜が入っていて、帰り際に好きなだけ持ち帰っていいという仕組みがあり、海外ではこういう形もあるのかと知りました。日本でもさまざまな農家さんのところにお手伝いに行き、周りの農家さんを見て、さまざまな農業の形があっていいし、それがおもしろいと思っています。」

野菜に関しては、料理人のリクエストを聞くことが多く、飲食店やホテルなどに直接卸しているため、野菜の大きさや形などを指定されての注文もあります。料理人の需要にあったものを高クオリティで提供し、誰が食べても美味しいと思えるような野菜を作っています。

「市場に出荷されているような農家さんからすると、サイズ指定などの面で難しいと思うことでも、僕たちは対応することが多いです。もちろん大変なときもあります。大変と感じるか、楽しいと感じるかは、紙一重ですが、僕は、楽しいと思う時の方が多いので今の形ができています。今では高い要求に応えてくれる生産者と認識してくださる料理人が増えてきていると思います。時に無茶ぶりもあるんですけどね…。」

 自分たちがつくったお野菜やお米を有名な料理人が美味しく調理してくださっていることや意外な調理方法で料理されていることがわかるとモチベーションにつながると言います。料理人から直接フィードバックをもらうことも多く、周りのみなさんとの関係性を大切にしながらお仕事をされています。

さまざまな野菜が育てられている畑が訪れる料理人とのコミュニケーションの場でもある

生まれ育ったまちへの恩返し

山田さんご自身も伏見生まれ、伏見育ちです。海外で過ごした経験もありますが、日本から外に出ることで、改めて日本と伏見の良さを再認識しました。

「伏見は、中書島の十石船から見える桜や松本酒造さん近くの河川敷の菜の花など、風景が綺麗で心に残る場所が多いという印象があります。また、昔からずっと続けてこられた製造業の方や酒蔵さん、農家さんも多くあります。古き良きものがきちんと今に残り、変化しながら続いています。古さと新しさが混ざり合い、とてもいい町です。」

また、伏見の特徴として、オープンマインドの人が多いと感じています。向島の農家仲間でも、果実の大きさ、収穫量、生産性など重視するものがそれぞれ異なっても、どのように農産物をつくっているかをみんなで共有し、互いに尊重し合う空気があります。また、地域の神社のお祭りや行事では、常にまとまりを持っており、道端で会えば同世代の仲間として、缶ジュース片手に世間話が盛り上がります。

「僕ができることは、地元の伏見にきちんと恩を返していくことです。自分のことだけでなく、町全体が盛り上がる形を考え、恩返しをしたいです。最近は、酒蔵さんなどの伏見の同世代の方と話す機会が多いのですが、同じように考えておられる方は多いです。独りよがりにならず、『町全体を盛り上げよう』という風土があると感じます。」

ヤマダファームの直売所にはお米やお野菜が並び、近所の方が買いに来られています

新しい京野菜が根付くことを夢見て

 ヤマダファームは、伏見に縁のある京野菜、桃山大根も育てています。かつては、深草大亀谷で育てられており、多い時は計50ha(ヘクタール)ほど栽培されていました。そのため酒蔵に勤める若い蔵人たちや、深草に駐屯していた陸軍の兵隊などが、ご飯のおともとして桃山大根のお漬物をよく食していた歴史があります。桃山大根は、一般的な大根に比べると少し肉質が硬いのが特徴です。昔ながらの大根なので、若干の苦みと辛みがありますが、甘味みもしっかりとあり比較的、味がはっきりした大根です。

現在も、多くの品種の野菜や種を引き継ぎ昔ながらの野菜を育てていますが、今後も京野菜やあまり知られていない在来種の野菜を残していきたいと語る、山田さん。

「地域の方や食べてくださる方に野菜の歴史を知ってもらうことが重要だと思います。そこには今まで育ててきた人たちの生きた証や数百年分の歴史や想いが詰まっています。最初は、自分が知りたくて調べたり先輩の農家さんにお尋ねし、少しずつ野菜のストーリーをお伝えしているうちに、いつしかガイドツアーの訪問先にヤマダファームが組み込まれるまでになりました。今後もそういったことを伝える側になれるように頑張っていきたいです。また、京野菜はさまざまな地域から献上されてきたものが今の地域に根付いているという歴史があります。今から100年後に、僕が育てた野菜やいただい種が根付いて『新しい京野菜』になっていたらおもしろいなと思っています。」

 自分の周りの人たちには、「かっこいいな」、「おもしろいな」と興味をもってもらえるような農業をやっていきたい。先代である6人の意思を大事にしながら、山田さんの思い描く農業の形を実現するために、変化し続けていきます。

ご高齢の農家さんから種を引き継ぎ、育てている九条太ネギ。多く流通する九条(黄)ネギより太く濃い

山田耕一さんの紹介記事です。

【山田耕一】 農家さんの紹介|KYOTO Vege Style

下記リンクより、山田ファームのInstagramをご覧いただけます

https://www.instagram.com/yamada__farm